特徴など |
1975年 6月 1日に旭光学工業 (現 ペンタックス株式会社) は、K マウントの導入に伴い、PENTAX K2、PENTAX KX、PENTAX KM の 3機種からなる K シリーズの発売を開始した。その 3機種の中で唯一すべて新設計であったのは K2 のみで、ファインダー視野率の向上のためのスイングバック式ミラー、ファインダーの明るさ向上のためのペンタプリズムの銀蒸着 (これについては KX についても実現されている)、ファインダールーペへの smc コーティングの実施などが行われているが、最大の新設計は受光素子の SPD 採用と、セイコーとの共同開発による縦走りメタルフォーカルプレーンシャッターの導入であった。このシャッター機構は無電源時にはオートでは 1/1000秒、マニュアルでは 1/250〜1/1000秒にダイヤルを合わせれば 1/1000秒、1/125秒以下の設定では 1/125秒で作動するという、後の PENTAX LX のハイブリッドシャッター機構で完成されることになる無電源時への対策の系譜を垣間見ることができる。 K2DMD はこの PENTAX K2 にモータードライブ、データバックの取り付けを可能とし、さらにいくつかの改良を加えた K シリーズの最上級機種として 1976年 9月に発売された。メタルフォーカルプレーンシャッター機でのモータードライブ装着は世界初。さらに K2 との違いは以下の通り。
メタルフォーカルプレーンシャッターでのモータードライブ撮影の実現は当時としては画期的ではあったはずだが、撮影速度は 0.5コマ/秒〜2コマ/秒とさほど速くはないし、フィルムの撮影枚数をあらかじめダイヤルにて設定し、撮影ごとに自動的にカウントダウン、ゼロで巻上げがストップするという機構であるため、今にしてみると使い勝手は決してよいとはいえない。また、昨今のワインダー内蔵のカメラに比較しても、レリーズボタンを押してからのタイムラグがかなり長いと感じるので、現代においてこれを使うにはやはり実用性に欠けると言えるし、故障した際にも修理は不可能であろう。 ちなみにモータードライブの電源には、PENTAX MX に装着されるモータードライブ MX と共用の Ni-Cd バッテリーパック M、バッテリーグリップ M が用意されていたが、PENTAX LX 用の Ni-Cd バッテリーパック LX も実は装着可能である。しかしながら、モータードライブ MD 本体のサイズは、一回り小柄な MX に装着する Ni-Cd バッテリーパック MX との兼ね合いから、K2DMD の横幅よりかなり小さいサイズとなってしまっていて見た目はあまりよろしくない。さらに、LX 用の Ni-Cd バッテリーパック LX を装着するにしても、今度はバッテリーパックの横幅がモータードライブ MD よりも大きくなって見た目はさらに凸凹となってしまいこれも NG。仕方がないのでバッテリーグリップ M を使おうにも、これはもう今時こんなものは恥ずかしくて持ち歩けないぞ、という外観になってしまうのである。K2DMD を買ったからにはモータードライブ MD は持っていたいところだが、ほぼ観賞用、もしくは重さを厭わないのであればバッテリーをつけずにグリップの用途としてつけっぱなし、というのがリーズナブルな使い方だと言えるのではないか。 |
使用履歴 |
PENTAX K2DMD を手に入れたのはごく最近、2000年 7月のことであった。ずっと長い間探し続けていてなかなかきれいな中古品に巡り会うことができなかったが、秋葉原のカメラのにっしんにてモータードライブ MD、バッテリーグリップ M 付で 125,000円の委託品を発見。もうひとつぼろぼろの K2DMD も店頭には並んでいたが、ここまできれいなものはなかなか見たことがないので委託品は割高なのを承知の上で動作をチェックして購入した。 初めて使った一眼レフカメラは PENTAX ME だったので、そのとき既に K シリーズは過去のものとなってはいたが、当時の PENTAX のカタログには M シリーズとともに K シリーズもラインナップされていて、K2、K2DMD はただひたすらに憧れの機種であった。子供のときに憧れていたものは大人になってカネができるとやはり欲しくなってしまうもので、中古でいつか手に入れようとずっと探していたのだがなかなか状態のいいものに巡り会えなかったのだった。そんな状況だったので、秋葉原のカメラのにっしんで見つけた美品の K2DMD にチェックが若干甘くなってしまったのかもしれない。店頭で見たときは「ファインダーの下の方に何か写り込んでるなぁ」としか思わなかったのだが、うちに帰ってきてじっくり遠くからファインダーの中を覗いて見てみるとなんとプリズムにヒビが入っていたのであった。「うーむ、外見の良さにだまされた...」といっても後の祭り。それにせっかくきれいな個体を見つけたのに売り戻すのも何なので修理をすることにした。ついでに露出補正の警告表示が戻りにくかったのも含めてカメラのにっしん経由で長谷川工作所に修理を依頼。上記に加えて電池蓋も交換してもらって 12,000円であった。修理期間も比較的短かった記憶がある。それぐらいの出資であれば、まぁ勉強だと思って諦めるか、というところである。 さて、その夏は仕事の関係で何度も熊本に行ったりしたので、そこでも K2DMD は PENTAX LX と共に趣味の写真を撮るのに大活躍したが、それからまもなく今度はシャッター速度にばらつきが出てきてしまった。メーカーのサービスでチェックしてもらうともはやボロボロ状態。当然 K2DMD は既に修理対象外なのでなすすべもなく。137,000円も投資して 1年ももたなかったというショックからしばらく立ち直れず、それでも個人的には PENTAX の35mm 一眼レフの中で K2DMD のデザインが一番スマートだと思っているので、観賞用にコレクションとして置いておくことに甘んじることになった。我が家の PENTAX ME もずいぶん前からオートにすると表示が UNDER のまま、シャッターも開きっぱなしという状況だが、既に IC 関連パーツがないとのことで修理不能。特にその時代の電子部品はもう入手が困難というのはよく聞く話なので K2DMD の修理もすっかり諦めていたが、2003年 7月号のアサヒカメラに掲載されていた長谷川工作所の記事で『以前インターネットにペンタックス修理の「救世主」、「駆け込み寺」みたいに書かれちゃって...』というくだりを読んで、「おぉ、そうだ。ひょっとしたら...」と思い立ってまさに駆け込み寺メールにて問い合わせたところ、なんと 20,000円程度のオーバーホールで修理可能との嬉しいお言葉をいただいた。早速、2003年10月20日に梱包、郵送して再度、今度は直接、修理を依頼することにした。ところが、雑誌の記事にもチラッと触れられていたが、駆け込み寺にはものすごい数の修理品が押し寄せているようで、修理が完了したのは年が明けてからの 2004年1月21日、まさにきっかり 3ヶ月後のことであった。修理内容は、シャッター幕交換、巻き上げ作動不良の修理、調整、オート機構作動不良の修理、調整、モルトプレーンの交換、その他調整を含めたオーバーホールで 20,000円であったが、個人的にはこの値段で K2DMD が新品同様になるのであれば安いものだと思う。購入後からの投資総額 157,000円の大枚を叩いた挙句にようやく手元に戻ってきた K2DMD は、シャッター作動音も軽快、硬くてがりがりしていた露出補正ダイヤルもスムーズに動くようになり、テスト撮影の結果も上々。まさに新品同様の操作感となって大満足なのである。「救世主」様に救っていただいたこの K2DMD をこれからじわじわと使い込もうかなと思っているところだ。 ちなみに、smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limited のブラック塗装は、この PENTAX K2DMD のブラック塗装の感じに非常に近く、PENTAX MZ-S や PENTAX LX に装着するよりも断然に K2DMD に装着した方が見た目のマッチングが良いと思う。もちろんマニュアル フォーカスで使うわけだが操作感はなかなか絶妙である。 (以下追記 1/2/2005) |
参考文献 |
『アサヒペンタックスのすべて』 朝日ソノラマ (1977年12月25日 初版発行) 『季刊クラシックカメラ No.8 - 特集 一眼レフ魂の結晶 ペンタックス』 双葉社 (2000年7月15日 発行) 『使うペンタックス』 中村 文夫著 双葉社 (2001年5月1日 第1刷発行) 『マニュアルカメラシリーズ10 ペンタックスのすべて』 竢o版社 (2002年1月30日 発行) 『アサヒカメラ 7月号』 朝日新聞社 (2003年7月1日 発行) 『アサヒカメラ 2004年 8月号特別付録 - 全国主要カメラ修理店案内』 朝日新聞社 (2004年8月1日 発光) |
PENTAX KM PENTAX K2DMD PENTAX MX PENTAX ME PENTAX LX PENTAX MZ-7 PENTAX MZ-S PENTAX 67 PENTAX 67II FUJI GS645S Professional FUJIFILM TX-1 RICOH GR1s