PENTAX K2DMD


名称: ASAHI PENTAX K2DMD / アサヒペンタックス K2DMD
発売年月: 1976年 9月
形式: TTL 自動露出式 35mm一眼レフカメラ
シャッター: 縦走行メタルフォーカルプレーンシャッター (セイコー MF)
オート: 電子式(8〜1/1000秒:無段階)
マニュアル: 機械式 (1/125秒:無電源 1/125秒以下にセット時、1/1000秒:1/250〜1/1000秒にセット時、B)、電子式 (B, 8〜1/1000秒)
X: 1/125秒
シンクロ: FP, X, X (ホットシュー)
ファインダー: 銀コートペンタプリズム式ファインダー (像倍率 0.88倍@50mm 視野率 95% ファインダーブラインド内蔵)
露出表示: 追針式 (シャッタースピード指針、露出連動範囲、絞り表示窓)
ミラー: スイングバック式クイックリターンミラー (露出記憶装置、ミラーアップ装置兼用メモリーロック)
露出計: TTL 中央重点全面測光
露出補正: 1/4×、1/2×、1×、2×、4× (補正警告ファインダー内絞り窓表示)
受光素子: SPD
測光範囲: EV1〜18 (F1.4レンズ付 ASA/ISO 100)
感度設定: ASA8〜ASA6400
巻き上げ: 巻上げ角 135度, 予備角 25度
レンズマウント: ペンタックス K マウント
使用電池: 1.5V銀電池(G13)×2
サイズ/重量: W144×H92×D52.5mm / 690g
PENTAX K2DMD + smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limited PENTAX K2DMD with Motor Drive MD + Battery Grip M + smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limited

特徴など

1975年 6月 1日に旭光学工業 (現 ペンタックス株式会社 は、K マウントの導入に伴い、PENTAX K2、PENTAX KX、PENTAX KM の 3機種からなる K シリーズの発売を開始した。その 3機種の中で唯一すべて新設計であったのは K2 のみで、ファインダー視野率の向上のためのスイングバック式ミラー、ファインダーの明るさ向上のためのペンタプリズムの銀蒸着 (これについては KX についても実現されている)、ファインダールーペへの smc コーティングの実施などが行われているが、最大の新設計は受光素子の SPD 採用と、セイコーとの共同開発による縦走りメタルフォーカルプレーンシャッターの導入であった。このシャッター機構は無電源時にはオートでは 1/1000秒、マニュアルでは 1/250〜1/1000秒にダイヤルを合わせれば 1/1000秒、1/125秒以下の設定では 1/125秒で作動するという、後の PENTAX LX のハイブリッドシャッター機構で完成されることになる無電源時への対策の系譜を垣間見ることができる。

K2DMD はこの PENTAX K2 にモータードライブ、データバックの取り付けを可能とし、さらにいくつかの改良を加えた K シリーズの最上級機種として 1976年 9月に発売された。メタルフォーカルプレーンシャッター機でのモータードライブ装着は世界初。さらに K2 との違いは以下の通り。

  • ファインダー内にの絞り値透視窓を追加
  • 露出補正ダイヤルを 1X 以外にした場合に絞り値透視窓にオレンジ色のフィルターをかけて警告
  • ファインダーへの逆入光を避けるためのアイピースシャッター (ファインダーブラインドというのが正式名称?) を追加
  • 電池が消耗したときにミラーが上がりっぱなしになる警告機能の追加
  • ミラーアップレバーによるミラーアップ時の露出メモリー機能、メモリーロック機能 (10分間) の追加
  • 裏ブタを交換可能にしてデータ MD とのコードレス接続を可能とした
  • モータードライブ MD の装着を可能とした

メタルフォーカルプレーンシャッターでのモータードライブ撮影の実現は当時としては画期的ではあったはずだが、撮影速度は 0.5コマ/秒〜2コマ/秒とさほど速くはないし、フィルムの撮影枚数をあらかじめダイヤルにて設定し、撮影ごとに自動的にカウントダウン、ゼロで巻上げがストップするという機構であるため、今にしてみると使い勝手は決してよいとはいえない。また、昨今のワインダー内蔵のカメラに比較しても、レリーズボタンを押してからのタイムラグがかなり長いと感じるので、現代においてこれを使うにはやはり実用性に欠けると言えるし、故障した際にも修理は不可能であろう。

ちなみにモータードライブの電源には、PENTAX MX に装着されるモータードライブ MX と共用の Ni-Cd バッテリーパック M、バッテリーグリップ M が用意されていたが、PENTAX LX 用の Ni-Cd バッテリーパック LX も実は装着可能である。しかしながら、モータードライブ MD 本体のサイズは、一回り小柄な MX に装着する Ni-Cd バッテリーパック MX との兼ね合いから、K2DMD の横幅よりかなり小さいサイズとなってしまっていて見た目はあまりよろしくない。さらに、LX 用の Ni-Cd バッテリーパック LX を装着するにしても、今度はバッテリーパックの横幅がモータードライブ MD よりも大きくなって見た目はさらに凸凹となってしまいこれも NG。仕方がないのでバッテリーグリップ M を使おうにも、これはもう今時こんなものは恥ずかしくて持ち歩けないぞ、という外観になってしまうのである。K2DMD を買ったからにはモータードライブ MD は持っていたいところだが、ほぼ観賞用、もしくは重さを厭わないのであればバッテリーをつけずにグリップの用途としてつけっぱなし、というのがリーズナブルな使い方だと言えるのではないか。

使用履歴

PENTAX K2DMD を手に入れたのはごく最近、2000年 7月のことであった。ずっと長い間探し続けていてなかなかきれいな中古品に巡り会うことができなかったが、秋葉原のカメラのにっしんにてモータードライブ MD、バッテリーグリップ M 付で 125,000円の委託品を発見。もうひとつぼろぼろの K2DMD も店頭には並んでいたが、ここまできれいなものはなかなか見たことがないので委託品は割高なのを承知の上で動作をチェックして購入した。

初めて使った一眼レフカメラは PENTAX ME だったので、そのとき既に K シリーズは過去のものとなってはいたが、当時の PENTAX のカタログには M シリーズとともに K シリーズもラインナップされていて、K2、K2DMD はただひたすらに憧れの機種であった。子供のときに憧れていたものは大人になってカネができるとやはり欲しくなってしまうもので、中古でいつか手に入れようとずっと探していたのだがなかなか状態のいいものに巡り会えなかったのだった。そんな状況だったので、秋葉原のカメラのにっしんで見つけた美品の K2DMD にチェックが若干甘くなってしまったのかもしれない。店頭で見たときは「ファインダーの下の方に何か写り込んでるなぁ」としか思わなかったのだが、うちに帰ってきてじっくり遠くからファインダーの中を覗いて見てみるとなんとプリズムにヒビが入っていたのであった。「うーむ、外見の良さにだまされた...」といっても後の祭り。それにせっかくきれいな個体を見つけたのに売り戻すのも何なので修理をすることにした。ついでに露出補正の警告表示が戻りにくかったのも含めてカメラのにっしん経由で長谷川工作所に修理を依頼。上記に加えて電池蓋も交換してもらって 12,000円であった。修理期間も比較的短かった記憶がある。それぐらいの出資であれば、まぁ勉強だと思って諦めるか、というところである。

さて、その夏は仕事の関係で何度も熊本に行ったりしたので、そこでも K2DMD は PENTAX LX と共に趣味の写真を撮るのに大活躍したが、それからまもなく今度はシャッター速度にばらつきが出てきてしまった。メーカーのサービスでチェックしてもらうともはやボロボロ状態。当然 K2DMD は既に修理対象外なのでなすすべもなく。137,000円も投資して 1年ももたなかったというショックからしばらく立ち直れず、それでも個人的には PENTAX の35mm 一眼レフの中で K2DMD のデザインが一番スマートだと思っているので、観賞用にコレクションとして置いておくことに甘んじることになった。我が家の PENTAX ME もずいぶん前からオートにすると表示が UNDER のまま、シャッターも開きっぱなしという状況だが、既に IC 関連パーツがないとのことで修理不能。特にその時代の電子部品はもう入手が困難というのはよく聞く話なので K2DMD の修理もすっかり諦めていたが、2003年 7月号のアサヒカメラに掲載されていた長谷川工作所の記事で『以前インターネットにペンタックス修理の「救世主」、「駆け込み寺」みたいに書かれちゃって...』というくだりを読んで、「おぉ、そうだ。ひょっとしたら...」と思い立ってまさに駆け込み寺メールにて問い合わせたところ、なんと 20,000円程度のオーバーホールで修理可能との嬉しいお言葉をいただいた。早速、2003年10月20日に梱包、郵送して再度、今度は直接、修理を依頼することにした。ところが、雑誌の記事にもチラッと触れられていたが、駆け込み寺にはものすごい数の修理品が押し寄せているようで、修理が完了したのは年が明けてからの 2004年1月21日、まさにきっかり 3ヶ月後のことであった。修理内容は、シャッター幕交換、巻き上げ作動不良の修理、調整、オート機構作動不良の修理、調整、モルトプレーンの交換、その他調整を含めたオーバーホールで 20,000円であったが、個人的にはこの値段で K2DMD が新品同様になるのであれば安いものだと思う。購入後からの投資総額 157,000円の大枚を叩いた挙句にようやく手元に戻ってきた K2DMD は、シャッター作動音も軽快、硬くてがりがりしていた露出補正ダイヤルもスムーズに動くようになり、テスト撮影の結果も上々。まさに新品同様の操作感となって大満足なのである。「救世主」様に救っていただいたこの K2DMD をこれからじわじわと使い込もうかなと思っているところだ。

ちなみに、smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limited のブラック塗装は、この PENTAX K2DMD のブラック塗装の感じに非常に近く、PENTAX MZ-SPENTAX LX に装着するよりも断然に K2DMD に装着した方が見た目のマッチングが良いと思う。もちろんマニュアル フォーカスで使うわけだが操作感はなかなか絶妙である。

(以下追記 1/2/2005)
上記の通り、見た目は完璧に動いていたかのように見えた K2DMD であったが、上記の修理後しばらくするうちに、どうもバッテリーの減りが異様に早いことに気付いた。特に電源スイッチを ON にしているわけではないのに、しばらくしまっておいた後に引っ張り出すと、必ずバッテリーが空になっているのである。とは言え、気のせいかと思いながらなかなか確信が持てなかったのだが、上記修理の半年の保障期間が切れる前に一度長谷川工作所に問い合わせてみようと、メールをするとありがたいことにチェックをしてくれるとのこと。早速、梱包して 7月30日 に本体を送付した。おりしもまたその同じ時期に『アサヒカメラ 2004年 8月号』に『全国主要カメラ修理店案内』なる小冊子が付録されたこともあり、これは相当にペンタックス系の修理が殺到しているに違いないと思い、相当に長期間かかることを予想して、その後特にに催促などはしていなかった。結局、手元に戻ってきたのは約4ヶ月後の 12月3日であったが、先方でのテストでは異常が見られなかったにもかかわらず、大変ありがたい事にメイン基盤と受光部の基盤を新品に取り替えてくれたとのこと。その後の調子はすこぶる順調でバッテリーの異常消費も見られず、中古で購入後 4年半の歳月を経てようやく正真正銘の新品同様の K2DMD を手に入れるに至ったわけである。というのも、最初に中古で購入して以降の修理で、ペンタプリズム、シャッター幕、メイン基盤、受光部基盤を交換してしまったのだから、購入当初の姿を残している部分は実は殆ど外装部品だけなのである。綺麗な個体を選択しておいたのは結局正解だったのかもしれない...。

参考文献

『アサヒペンタックスのすべて』 朝日ソノラマ (1977年12月25日 初版発行)
『季刊クラシックカメラ No.8 - 特集 一眼レフ魂の結晶 ペンタックス』 双葉社 (2000年7月15日 発行)
『使うペンタックス』 中村 文夫著 双葉社 (2001年5月1日 第1刷発行)
『マニュアルカメラシリーズ10 ペンタックスのすべて』 竢o版社 (2002年1月30日 発行)
『アサヒカメラ 7月号』 朝日新聞社 (2003年7月1日 発行)
『アサヒカメラ 2004年 8月号特別付録 - 全国主要カメラ修理店案内』 朝日新聞社 (2004年8月1日 発光)


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