FUJIFILM TX-1


名称: FUJIFILM TX-1 / フジフィルム TX-1
発売年月: 1998年 9月
形式: レンズ交換式距離計連動カメラ
標準 / フルパノラマ切り替え式
シャッター: フォーカルプレーンシャッター
8〜1/1000秒, B (最長30秒)
画面サイズ: 標準画面: 24x36mm
フルパノラマ画面: 24x65mm
シンクロ: ホットシュー、シンクロソケット
同調速度 1/125秒以下
ファインダー: 採光式ブライトフレーム (自然光) ファインダー
パララックス自動補正
視野枠: レンズ交換で 45mm/90mm 自動切換え、標準 / フルパノラマ切り替えつまみで標準 / フルパノラマ切り替え
倍率: レンズに対応し倍率変化 (f=45mm: 0.45倍 / f=90mm: 0.66倍)
視野率: 85%以上
距離計: レンズフォーカスリングと連動する二重像合致式連動距離計
露出制御: シャッター幕面ダイレクト測光
連動範囲: Ev4 (F4) 〜 Ev19 (F22) (ISO100時)
露出モード: 絞り優先 AE、マニュアル
ファインダー内表示: 露出インジケーター (− ● +) の LED 照明
液晶表示: フィルム感度、シャッタースピード、オートブラケット、総ショットカウンター、電池警告マーク、バックライト照明付、オートブラケット設定時残数不足警告、セルフタイマーマーク
セルフタイマー: 10秒
オートブラケット: 0.5Ev / 1.0Ev 選択
標準 → アンダー → オーバー
露出補正: ±2Ev (1/2 ステップ刻み)
感度設定: DX オートセット、マニュアルセット
ISO25〜ISO3200 1/3ステップ刻み
フィルム送り: 順装てん、プレワインド式、自動巻上げ、オートリワインド
給送モード: シングル / コンティニュアス
フィルムカウンター: 液晶表示部に残数表示 (最終コマ巻取り後 "E" 表示)
標準 / フルパノラマ自動切換え (フルパノラマ時 "P" 表示)
使用電池: リチウム電池 CR2×2
サイズ/重量: W166×H82×D51mm / 720g
FUJIFILM TX-1 with 水平儀 + SUPER EBC FUJINON 45mm/F4 FUJIFILM TX-1 with 水平儀 + SUPER EBC FUJINON 45mm/F4

特徴など

FUJIFILM TX-1 は 1998年 9月に富士フィルム株式会社がハッセルブラッド社との共同開発によって発売した 35mm判フィルムを使用するデュアルフォーマットのレンズ交換可能レンジファインダー式カメラである。いわゆる 35mm判の標準フォーマットである 24mm×36mm のコマに加えて、24mm×65mm の独自のパノラマ用フォーマット (富士フィルムではフルパノラマと呼んでいる) のコマを混在させることができることが最大の特徴である。よくあるフツウのコマのままフィルムの上下を切り捨てた形のパノラマではなく、約 2コマ分のスペースを使ってパノラマ撮影をすることで、35mmフィルムでのクオリティの高いパノラマ撮影を可能にした点において今のところ他の機種にはないアドバンテージを誇っている。

フィルム装てん時に終わりまでプリロードし、撮影ごとに巻き戻していく方式とすることによって、撮影途中でのフィルムフォーマットの変更にも対応することができる点はありがたい。コマの大きさを変更した時点でフィルムが必要なだけ繰り出し/巻き戻しされ、コマずれが起こらないように設計されているというわけである。もちろんフィルムカウンターもそのときのフォーマットで撮影できる残り枚数が自動的に表示される。一方、フルパノラマと標準のコマを混在させることで、現像時には長巻現像の指定をしなければならず、もちろん現像から上がってきたフィルムをスリーブやファイルに入れるために自分でフィルムをカットするのだが、慣れない手つきではさみで切るにはかなり緊張を要するので、結局フィルムカッターを買わなければならなくなってしまう (個人的には市販されているものの中では、富士カラー販売の『フィルムカッター 135/2B』という製品がライトボックスの上において作業をする上では一番使いやすいと思われるが...)

ファインダーは同じく FUJIFILM の GS645S Professional と比較すると雲泥の差の見易さで、ライカの M6 には及ばないものの 62.2mm の基線長を生かし、ファインダー光学系の 7箇所に高屈折ガラスを使用するなど、気合の入った設計となっているようだ。このファインダーは本体と同時に発売された TX45mm/F4.0、TX90mm/F4.0 のレンズをそれぞれ装着すると、ファインダー倍率とブライトフレームがそれに対応して自動的に変更されるようになっているが、特に TX90mm装着時に標準フォーマットで撮影しようとするとファインダーに対してブライトフレームがかなり小さくなってしまい、またレンズ自体もファインダー視野に入り込んでしまうためちょっと違和感のあるものになってしまうのが残念な点である。

また、よく言われる点で、先ごろ発売された TX-2 では改善された点であるが、ファインダー内にシャッター速度、絞り値等の情報が表示されないのは、やはり最近のカメラに慣れてしまった身にはちょっと心細い。それと、付属のストラップのバックルの部分が金具で成型されているため、油断しているとボディーが傷だらけになってしまって悲しい思いをするところはもう少し配慮して欲しかったなと思わせる部分ではある。

使用履歴

TX-1 を購入したのは 1999年の 1月。それまで、山に登ったり海外に旅行したりして雄大な風景やとにかく横に長い風景に出会った際に、パノラマ撮影のできるレンズ付フィルムなどを使って撮るものの、現像から上がってきた写真を見て悲しい思いをしたことが幾度となくあった。かと言って、ブローニー判を使うレンズ固定のパノラマカメラに手を出すほどゆとりもなかったが、35mm フィルムを使い、さらにレンズ交換も可能な TX-1 が発売されて、これはもうすぐに買わなければならないという状況となった。

35mm フルパノラマで撮影される映像はもちろん素晴らしく、特に縦位置で撮影したときの面白さは格別なのだが、「これぞパノラマカメラ冥利に尽きる」、という風景に出会うときに限って持ってきていないという悲しいかななかなか使いこなすのが難しい (?) カメラなのである。山に登るときは登るときで、67判のカメラを持ってしまうと、バックアップに何かを持っていくとしても 67レンズがアダプターで使える PENTAX の 35mm 一眼レフか、さらに軽量化するときには RICOH GR1s になってしまうのは避けられず、かといって TX-1 一台だけを持って山に入るというのもなかなか度胸がいるものであり、結局、クルマでフル装備で出かけられるときか、レンタカーで走り回る海外旅行の際などの出番が中心になってしまう。液晶表示部に表示される累積撮影枚数を見るにつけもっと使わないともったいないと思う今日この頃、いつかきちんとこのカメラで写真を撮りまくってあげなければと思っている。

使う場合に注意する点としてはまずは水平儀が必須。パノラマ写真ではわずかな傾きが致命傷になってしまうので、そういう意味では手持ち撮影には適さないカメラなのである。少なくともパノラマで撮ろうと思うときはどんなに面倒でも三脚に固定しないと、後で本当に悔しい思いをするのである。二番目が TX45mm で撮影した場合に周辺光量が落ちるという点。これはセンターフィルターが発売されたのでそれを使えばいいんだろうけど。次が現像時の長巻指定。撮ったフィルムを確実に他のフィルムと分離しておかないと悲惨なことになってしまう。以前そういう事態に遭遇し、結局撮影した十数本のフィルムをすべて長巻指定で現像し、後でフォーマットにあわせてカットするという苦労を強いられてしまった。結果的に数々のフィルムカッターが家に累積する事態となるのである。そして最後が撮った写真のスキャンである。フラットヘッドか 67判以上のフォーマット対応のスキャナーでないとスキャンができないので、プリントする場合はいいのだが、スキャンを前提とする場合にはそれなりの覚悟が必要となってしまうのである。

あと余談だが、PENTAX のカメラを使い慣れている人は気をつけないと、ピントリングも絞りリングも回転方向が逆なので、二重像合致式ファインダーでものすごくピントの合わせずらい被写体を撮影するときに、無限遠だからといって油断して撮影すると実は最短距離にピントがあっていたりするかもしれない...。これも一度あったような気がする。

参考文献

『FUJIFILM TX-1 使用説明書』
『アサヒカメラ 12月号』 朝日新聞社 (1998年12月1日発行)
『毎日ムック '99 カメラ買い物情報』 毎日新聞社 (1999年1月20日発行)
『カメラ年間 2003』 日本カメラ社 (2003年1月15日発行)


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