PENTAX MZ-S


名称: PENTAX MZ-S / ペンタックス MZ-S
発売年月: 2001年 5月
形式: TTL ストロボ内蔵 マルチモード TTL 自動露出 AE/AF 35mm一眼レフカメラ
シャッター: 電子制御縦走りフォーカルプレーンシャッター
オート: 30〜1/6000秒:無段階
マニュアル: 30〜1/6000秒, B, 電磁レリーズ
シンクロ: ホットシュー
(X 接点専用ストロボ接点付)専用ストロボ連動, ISO 連動範囲: 25〜800, 同調速度 1/180秒以下
専用ストロボ使用でハイスピードシンクロ、ワイヤレスシンクロ、P-TTL オート可能
内蔵ストロボ: 直列制御 TTL ストロボ
ガイドナンバー: 12 (ISO100/m)
照射角度: 24mm レンズをカバー
同調速度: 1/180秒以下
ISO連動範囲: 25〜800
光量比制御可能、自動発光可能、赤目軽減機能
ファインダー: ペンタプリズム ファインダー (像倍率 0.75倍@50mm/F1.4, 視野率 92%, 視度 -2.5〜+1.5 m-1
交換式ナチュラルブライトマットフォーカシングスクリーン
オートフォーカス機構: TTL 位相差検出式 6点測距 (SAFOX VII)
オートフォーカス作動輝度範囲: Ev-1〜18 (ISO100/F1.4)
フォーカスモード: AF.S / AF.C (動態予測可)/ MF
フォーカスロック可能、測距点切り替え可能
露出モード: プログラム自動露出、シャッター優先自動露出、絞り優先自動露出、マニュアル露出、バルブ
ファインダー内表示: フォーカス表示、シャッター速度表示、絞り表示、ストロボ情報、露出補正値、マニュアル露出時のオーバー/アンダー表示、AE ロック (*)
LCD パネル表示: 露出モード、フィルム感度、シャッター速度、絞り値、撮影データフィルム印字設定、フィルム状態、電池残量、ストロボ状態、フィルム枚数、ペンタックスファンクション、電子音/照明機能設定
AE ロック: ボタン式
プレビュー: 電子式
セルフタイマー: 電子制御式 (12秒/2秒:ミラーアップあり)
オートブラケット: ±1/2EV、±1EV (露出補正併用可、撮影順序およびコマ数変更可)
ミラー: クイックリターンミラー (セルフタイマー2秒時ミラーアップ可能)
露出計: TTL 開放分割測光 (6分割)
測光範囲: EV0〜EV21 (ISO 100 50mm/F1.4)
中央重点、スポット測光可能
露出補正: ±3 (0.5 ステップダイヤル式)
感度設定: ISO6〜ISO6400 (DX フィルム: ISO25〜ISO5000)
撮影データ写しこみ: フィルム余白部 (累計フィルム本数、フィルム感度、印字濃度、露出モード、測光方式、シャッター速度、絞り値、露出補正値、オートブラケット有無)
データバック: クォーツ制御液晶表示式デジタル時計
オートカレンダー: 西暦2049年まで (閏年自動修正)
写しこみ方法: 7セグメント 6桁 LCD (フィルム背面より写しこみ)
表示種類: @年月日 A日時分 B ------ (写しこみなし)C月日年 D日月年
フィルム感度: ISO25〜ISO1600
電源: リチウム電池 CR2025
発光回数: 約 5,000回
カスタマイズ: ペンタックスファンクション 19項目設定可能
巻き上げ: 内蔵モーターによる自動巻上げ、巻き戻し
1コマ撮影、連続撮影 (2.5コマ/秒)
フィルム終了時自動巻き戻し、多重露出可
フィルム入れ: オートローディング (裏蓋閉じにより1コマ目まで自動巻上げ、フィルム情報窓付き)
レンズマウント: ペンタックス KAF2 マウント (マウント指標部照明機能付き、KAF2 マウント付レンズとの組み合わせによりパワーズーム使用可能)
使用電池: 3V リチウム電池 CR2×2
サイズ/重量: W136.5×H95×D64mm / 520g
PENTAX MZ-S with Battery Grip BG-10 + smc PENTAX-FA ZOOM 20-35mm/F4

特徴など

PENTAX MZ-S は 2001年5月26日に旭光学工業 (現 ペンタックス株式会社 より発売された MZ シリーズの最高級機である。MZ シリーズの最高級機なのに MZ-1 というネーミングではなかった点に関して、開発企画室主任の石井氏は 2001年の『日本カメラ 9月号』掲載の『メーカーに聞く - ペンタックス MZ-S』という記事の中で、「...MZ を作ろうというよりも、MZ-5、MZ-3 のダイヤル式を受け継ぎながら、Z-1P のよさも継承していきたい、両方のいいところを融合させたい...」と開発の発端を語っている。そういった意図による別の系統のカメラという認識をしてもらいたいがために、あえて "S" というネーミングにしたのだという。

細かい機構的なスペックでは他社のハイエンド機に比較すると控えめな設計故に、スペック重視のユーザー層にはいまひとつ受けが良くなかったといわれている MZ-S だが、MZ-S の特徴といえばそういう細かいスペックをどうこう言うよりも、ユーザーインターフェースの部分を語るべきであろう。手前に30度傾けられたボディー上面は話に聞くだけだと、その程度で何か変わるのか、と思いがちだが、ボディー上部の円形の Tv 電子ダイヤル内の表示が液晶であるため、この液晶の視野角を確保するには非常に有用なのである。バッテリーグリップとの一体感もまた秀逸であると思う。縦位置に構えた場合の持ちやすさも特筆すべき点であろう。

操作性という意味でのユーザーインターフェースとしては、PENTAX Z-1P の「ハイパー制御」譲りの「ハイパーオペレーティングシステム」を抜きには語れない。プログラム AE から TV 電子ダイヤルを回せばシャッタースピード優先 AE、レンズの絞り環を回せば絞り優先 AE、両方まわせばマニュアル露出、さらに Tv オートボタンを押せば、絞り環が A 位置の場合にはプログラム AE に、それ以外の位置であれば絞り優先 AE モードに即座に復帰することができるという極めて自然かつ直感的に使えるユーザーインターフェースを実現している。

機能的には撮影データをフィルムのパーフォレーション間に記録する方式はユーザー本位のとてもありがたい設計であり、また、ペンタックスファンクションのプログラムラインの選択や測距点と測光のリンクなどは個人的にはなかなか良い機能だと思っている。レンズの性能をカメラ任せで活用できるのはとてもお気楽だ。

一方、ボディー左側の AEB (オートブラケット) のステップ設定と 露出補正値、ISO感度設定、ペンタックスファンクションの設定を同軸化しているダイヤルは、AEB の基準値をプラスまたはマイナスに視覚的にシフトできるという点においてアイデアは確かに素晴らしいが使い勝手はあまりよくない。片手でダイヤル下のロックをはずして 露出補正ダイヤルを回すのには慣れが必要だし、さらにその内側のステップ切り替えダイヤルを親指の腹で回すのはマニュアルにその操作の具体的な方法が書かれていないだけに手先と頭の器用さが要求される。また、側距センサーの選択をオートから任意設定に変えるためのレバーの位置も、フツウにカメラを構えていた場合になかなか指が届かない位置におかれている。特に縦位置で構えているような場合には咄嗟にセッティングを変えるのはほぼ不可能で、せっかくバッテリーグリップがよくできているのにとてももったいないと感じる。

あと、余り多くの人は遭遇しないのかもしれないが、M42 のタクマーレンズや他のスクリューマウントのレンズを使う場合に、マウントアダプター K を介してレンズを装着するとマウント指標部の照明が点灯しっぱなしになってしまう。タクマーレンズを常用レンズに加えている場合には、ペンタックスファンクションの No.18 を変更して照明をオフにしておかなければならない。まぁスクリューマウントなのだから指標部が点灯する必要はないのだが、K マウントレンズと併用する場合にはちょっと残念である。これは、レンズ着脱レバーに連動したマウント内のピンが、スクリューマウントレンズによって押し下げられたままの状態になってしまうことが原因のようだ。微々たる量であろうが、点灯しっぱなしになってバッテリーを食ってしまうのはもったいないので、照明はオフにせざるを得ない。

また、もうひとつ残念なのは、M レンズでは問題ないのにスクリューマウントのレンズだとフォーカスエイドが使えないという点であろうか。ちなみにこれはスクリューマウントのレンズでは、KAF2 マウント内の電気接点が導通しないことが原因のようで、試しに10円玉をはさんでスクリューマウントのレンズをねじ込んでみると、なんとフォーカスエイドが機能するようになった (もちろんこれでは無限遠も出ないしメーカー推奨の正しい使い方でもない。これを試して回路がショートして本体が故障しても当方では一切責任は負いませんのでくれぐれもご注意の程を)

使用履歴

PENTAX MZ-S を購入したのは 2001年7月のこと。そもそも発売からしばらく様子をみて、初期の問題点の修正を待ってからにしようと考えていたが、やはり最初のロットにはファームウェアの問題があったようだ。自分では PENTAX LX の購入以降、FUJI GS645SPENTAX 67 を中心とした中判カメラのシステムに投資していたため、我が家の AF化は大幅に遅れていた。PENTAX からちょうどその頃に発売されていた Z-1P は確かにハイエンド機ではあったがいまひとつデザインが垢抜けないものがあったし、同様に MZ-5 や MZ-3 もプラスチックのボディーが軽すぎる点や巻上げ速度が遅いのが気になって手が出なかった。一方、自分用ではなかったのでほとんど使うことはなかったが、1999年の9月に MZ-7 を購入しており、これを見ていたために同じ SUFOX IV を使用している MZ-5 や MZ-3 を買う気が失せてしまったというのも実はあった。MZ-7 は初心者向けの機種であるためワイドフォーカスエリアの AF で (ターゲットユーザーの設定上それは仕方がないことだとは思うが...)、それが故に合焦しないことがあり、いまひとつ自分の中で SUFOX IV を信頼できなかったためである。

そういった経緯から、MZ シリーズの最高機種が出るのを心待ちにしていたところ、ようやく MZ-S が発表された。巻き上げ速度こそ 2.5コマ/秒に留まってはいたが、ボディーへのマグネシウムダイキャストの使用、ボディ上部の斬新なデザイン、選択可能な 6点測距、6分割測光、ハイパーオペレーションの搭載、撮影データのパーフォレーション間印字など、自分の中では満足できるスペックが数多く搭載されていたため購入を決意するに至った。

こうして遅ればせながら AF 化を果たしたわけだが、動態予測も搭載されている MZ-S は既に我が家の犬が遊ぶのを撮影する為に必要不可欠な存在となってしまった。どんなに PENTAX LX のモータードライブが唸りを上げて 5コマ/秒で猛回転しても、ものすごいスピードで縦横無尽に走り回る犬に置きピンで対応するのには限界があるというものだ。とはいえ、MZ-S も願わくば巻き上げスピードがもう少し速くなって、測距センサーの選択がもう少しやりやすければ、よりストレスなく犬の写真を撮れるのだが。

(以下追記 1/9/2007)
購入以来、4年間はまったく故障など無縁の MZ-S であったが、2005年の夏の猛暑のさなか原因不明の故障に見舞われた。気温が 30度を超えて湿度が激しい状態だと、AF 測距点の選択レバーを SEL の位置にしたときにファインダー内の測距点表示が全点灯してしまって測距点のセレクトができなくなってしまうのである。これは、明らかに気温と湿度に関係があるというのは使っていれば明白なのだが、この現状を修理するのは困難を極めた。というのも、修理センターはおろか、修理受付のペンタックスフォーラムも、この時期当たり前のことだが冷房完備でで室内は適温、もちろん除湿されており、その状態では絶対にこの症状は再現しないのである。ペンタックスフォーラムの受付で説明して一旦は修理を受け付けてもらったが、受付裏で行われる簡易点検でも修理センターでも現象は再現せず、10日間程でそれらしきところを点検されて戻ってきたボディーは、酷暑の中で使うとやはり測距点の選択ができない状態のまま。再びペンタックスフォーラムに持ち込もうにも、そもそも、修理受付で再現させないことには信用もしてもらえないので、まずは受付票を取ってからすぐに外に出てギリギリまで蒸し暑い外で待ち、ガラスを通して見える涼しげな室内の呼び出し番号が変わった瞬間に中に飛び込むという荒業で何とか受付での現象再現を獲得。事情を説明してすぐに裏でも確認してもらってこれもどうにかこうにかパス。ようやく受付備考欄に『PF確認済』というお墨付きの修理に持ち込むことができたのである。

結局、「測距点選択レバーのスイッチの接点がブラシのようになっているようで、そこが激しい湿度で変質したのが原因ではないか」、とのことであったが、やはり修理センターでは再現しなかったのではないかと思っている。というのは修理票には「オートフォーカス部切替不の為調整、各部点検」と記載されているのみで部品を交換した形跡がなかったからである。いずれにしても、二度目の修理から帰ってきたのは既に 8月も終わりに差し掛かったころで、その時期は 6月末〜7月中旬ほどの高温多湿状態は既になく、果たしてカンペキに直っているのかどうかの確認は 2006年夏まで持ち越しとなったのであった。(ちなみに 2006年の夏は猛暑の中を紀伊半島一周のツーリングに駆り出された MZ-S だが、上記の現象は再発せず無事に夏を過ごしたので、実は直っていた可能性も高い...。)

参考文献

『PENTAX MZ-S QUARTS DATE 使用説明書』
『PENTAX MZ-S (カタログ)』 (2001年6月現在)
『アサヒカメラ 7月号』 朝日新聞社 (2001年7月1日発行)
『日本カメラ 7月号』 日本カメラ社 (2001年7月1日発行)
『アサヒカメラ 9月号』 朝日新聞社 (2001年9月1日発行)
『日本カメラ 9月号』 日本カメラ社 (2001年9月1日発行)
『カメラ年間 2004』 日本カメラ社 (2004年1月15日発行)


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