PENTAX MX


名称: ASAHI PENTAX MX / アサヒペンタックス MX
発売年月: 1976年 11月
形式: TTL 露出計内蔵式 35mm一眼レフカメラ
シャッター: 横走りゴム引き布幕シャッター (1〜1/1000秒, B, X=1/60秒)
シンクロ: FP, X, X (ホットシュー)
ファインダー: 銀コートペンタプリズム式ファインダー (像倍率 0.97倍@50mm 視野率 95%、フォーカシングスクリーン交換可)
露出表示: 3色 LED 表示による適正露出会わせ式 (シャッタースピード、5段階 LED 露出表示、絞り表示窓)
ミラー: クイックリターンミラー
露出計: TTL 中央重点全面測光
受光素子: GPD (ガリウム砒素リンフォトダイオード)
測光範囲: EV1〜19 (F1.4レンズ付 ASA/ISO 100)
感度設定: ASA25〜ASA1600
巻き上げ: 巻上げ角 162度, 予備角 20度, 分割巻上げ可
レンズマウント: ペンタックス K マウント
使用電池: 1.5V銀電池(G13)×2
サイズ/重量: W135.5×H82.5×D49.5mm / 495g
PENTAX MX + smc PENTAX-M 40mm/F2.8 PENTAX MX with Winder MX + smc PENTAX-A ZOOM 24-50mm/F4

特徴など

旭光学工業 (現 ペンタックス株式会社 と OLYMPUS M-1 との小型軽量化競争によって生まれたのが PENTAX MX である。一口に小型軽量化といっても、それを実現するための方法論は多岐に渡り、単なる部品の小型化ではなく、同じ役割をするより小さい部品の採用 (針メーターの代わりの LED 表示やシャッターのリボンをヒモにするなど)、ファインダーのコンデンサーとプリズムの一体化によるレンズ光軸からファインダー光軸までの高さの軽減、低電圧化による電池スペースの小型化、ギヤの配列を調整するなどさまざまな方法により物理的な大きさを軽減したようだ。

PENTAX MX といえば小型軽量が最大の特徴だが、システムも結構充実していた。交換可能なフォーカシング スクリーンやワインダーはもちろん 5コマ/秒まで対応したモータドライブやその他のアクセサリーが改造なしに取り付けることが可能で、また M シリーズの中では唯一絞り値透視窓がついているなど他の M シリーズの電子制御の自動露出機にはないメリットを数々備えていた。これらの点について 1980年発売の最高級機 PENTAX LX に通ずるものを感じるが、実際の開発は LX の方が MX よりも先行していたというのだから、技術の多くは LX から MX に流用されたものかもしれない。

また PENTAX ME と共に初期型の受光素子にまったく新しい GPD (ガリウム砒素リンフォトダイオード) が使われたという点も忘れてはならない。CdS の後出てきたシリコン素子は赤外光に最大感度を持っておりフィルターなどで赤外光を遮断しなければならないが、GPD は日本電気社との共同によりカメラのために開発された当時最先端の素子で、赤外光には感度がなく可視光に近い素直な反応をし応答速度も速かった。MX にはこれが 2個搭載されていたが後期においては応答速度、測光制度を強化した SPD に変更された。

使い勝手としては、像倍率 0.97倍の MX のファインダーは非常に見やすいのだが、一方でメガネをかけているとファインダーの四隅まで完璧に見るのはかなり厳しいという難点もある。また、巻き上げがいまひとつスムーズに行かないとこころや、巻き上げ角が大きいのは小型化によるところなので仕方がないとは思う。モータードライブ MX は未だ入手していないのでなんとも言えないが、ワインダー MX に関して言えば、やはり PENTAX K2DMD のモータードライブ MD と同様に、レリーズのタイムラグがかなり長く感じられるので、現代における実用性は低いと思われる。そのためか、ほとんど見かけないモータードライブ MX に比較してワインダーの方は中古カメラ店ではかなりの数を見ることができる。

使用履歴

PENTAX MX を手に入れたのは、2002年の 9月13日の金曜日だったと思う。新宿の京王デパートで開催されていた中古カメラ展『世界の中古カメラ掘り出し市』にたまたまフラっと立ち寄った際に、出店していた藤沢商会のブースでほとんど使われた形跡のないかなりきれいな個体 (初期型) を発見して思わず衝動買いしてしまったのだった。ほとんど使われていなそうだったので一抹の不安はよぎったが、まぁ美品だし多少割高なのも仕方なかろうとお店の人にシャッターに問題などないかを確認して 36,000円にて本体のみ購入。後にメーカーのサービスにてチェックしてもらったところ、実は 1/250秒以上は油切れにて不安定との診断であったが、高速シャッターを使わなければそこそこフツウに動いてはいるので、今のところは使えるレベルで使っている。いずれ調整に出そうと思っているが。

中学1年の時、初めて手にした一眼レフカメラは PENTAX ME であったが、その後マニュアル機が欲しくなったときには値段が下がっていた PENTAX KM を買ってしまったので、MX にはなぜか縁遠い存在であった。しかしながら、我が家の ME はもう全然まともに動かない状態で一般論的に修理も絶望的、でも小さな M シリーズを戦力に加えたい、でも PENTAX K2DMD の時の失敗もあるので買うならオートはやめようと思っていた矢先の遭遇であったので、これはもう買うしかない運命だったのだろう。それに中古カメラ店でも PENTAX MX は割と見かけるがあまりきれいなものには巡り会えていなかった。中古カメラの世界では、きれいな個体は使われていないのでシャッターの油切れなど起こっていることが多いといわれているがまさにその通り、しかも購入したのは初期型 (シリアル番号 9百万台) であったので、海外在庫 (中古?) の買戻しだったのかも知れない。でもまぁ、露光素子に GPD が使われている本来の姿の PENTAX MX なので、それでよいのだ。

まぁとにもかくにもちっちゃくて軽い。シャッター音も乾いた軽い音である。巻き上げはぎこちないし巻き上げ時の音も美しいとは言えない (これは調整すれば直るのかもしれないが) ので、いじくりまわしていて幸せになれるカメラではないかもしれないけれど、smc PENTAX 40mm/F2.8 などをつけてみればその小ささにそこはかとないヨロコビを感じつつ、中学生時代当時の記憶が甦ってくるというものなので、これもこれでよいのだ。

参考文献

『アサヒペンタックスのすべて』 朝日ソノラマ (1977年12月25日 初版発行)
『季刊クラシックカメラ No.8 - 特集 一眼レフ魂の結晶 ペンタックス』 双葉社 (2000年7月15日 発行)
『アサヒカメラ ニューフェース診断室 - ペンタックスの軌跡 ペンタックス主な 21機種「診断室」再録』 朝日新聞社 (2000年12月1日発行)
『使うペンタックス』 中村 文夫著 双葉社 (2001年5月1日 第1刷発行)
『ペンタックス LX 完全攻略』 中村 文夫著 学習研究社 (2001年12月28日 発行)
『マニュアルカメラシリーズ10 ペンタックスのすべて』 竢o版社 (2002年1月30日 発行)


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