PENTAX ME


名称: ASAHI PENTAX ME / アサヒペンタックス ME
発売年月: 1976年 12月
形式: 自動露出 TTL デジタル表示式露出計内蔵 35mm一眼レフカメラ
シャッター: 縦走行メタルフォーカルプレーンシャッター (セイコー MFC シャッター)
オートシャッター: 電子式 (8秒〜1/1000秒, 連続無段階)
メカニカルシャッター: B, 1/00秒 (無電源で作動)
シンクロ: X, X (ホットシュー)
シンクロ: 1/100秒
ファインダー: 銀コートペンタプリズム式ファインダー (像倍率 0.97倍@50mm 視野率 92%、スプリットマイクロマット式フォーカシングスクリーンで固定)
露出表示: 16個の赤色 LED にてシャッター速度を表示 (各シャッター速度 / OVER / UNDER、メカニカルシャッター 1/100秒は点灯せず)
ミラー: クイックリターンミラー
露出計: TTL 中央重点全面測光、絞り優先式自動露出 (シャッターボタン第一段で ON)
露出補正: 1/4×、1/2×、1×、2×、4×
受光素子: GPD (ガリウム砒素リンフォトダイオード)
測光範囲: EV1〜19 (F1.4レンズ付 ASA/ISO 100)
感度設定: ASA12〜ASA1600
巻き上げ: 巻上げ角 135度, 予備角 30度, 巻上表示窓、フィルム送り/巻き戻し確認窓
フィルム入れ: マジックニードル式クイックシュアローディング
レンズマウント: ペンタックス K マウント、フランジバック 45.5mm
使用電池: 1.5V銀電池(G13)×2
サイズ/重量: W131×H82.5×D49.5mm / 460g
PENTAX ME + smc PENTAX-M 35mm/F2.8

特徴など

旭光学工業 (現 ペンタックス株式会社 と OLYMPUS M-1 との小型軽量化競争によって生まれた PENTAX MX よりも一ヶ月後れ、『自動マイクロ一眼』のキャッチフレーズと共にリリースされた PENTAX ME は軽量、小型で人間性に基づいた操作性を実現すべく、絞り優先オートに徹しシャッターダイヤルをも省略した大胆なコンセプトや、MX よりもさらに薄い (28.8mm) ホールディング部、横幅も MX よりも 4.5mm 短く、さらに重量も 35g の軽量化を実現している。また、ファインダー内に 16個の LED を点灯させシャッター速度を表示するなど、初心者や女性をターゲットとするべくユーザーインターフェースにも革新的な方式が取り入れられた。

シャッターユニットには、PENTAX K2 に使用されたセイコー MF (縦走行メタルフォーカルプレーンシャッター) の発展型として、後幕を一枚多い 6枚とすることで高さと幅を 5mm 以上短く、重さを半分に開発されたセイコー MFC を採用している。ちなみにこのシャッターユニットは、PENTAX ME 以外の当時の他社の機種、MINOLTA XD、NIKON FG、Leica R4、CHINON CE などでも採用されたというから、いわば一世風靡したシャッターユニットであったようだ。

新設計の Bi-MOS LSI の採用で低電圧化と安定動作を実現し、また、LED 表示においても、過度な反応を避けるためのフリッカーレス回路や、バッテリー低下による点滅機能等を取り入れることで精度と操作性の双方を同時に向上させている。

但し、あまりにも小型化が過ぎたため、ボディー下部からレンズの絞り環がはみ出してしまい、三脚に取り付ける場合には雲台との間にプラスチックのプレートを挟まなければならないという不便さや、小型化故の対ショック性の低さへの懸念などが、当時の辛口調でかなり部数を伸ばした書籍『誰も言わなかったカメラ術』 (楠山忠之著 青春出版社) などでは指摘されたりもしていた。

アクセサリとしてはワインダー ME やダイヤルデータ ME などが用意されていた。ワインダー ME は単三電池 6本で秒間 1.5コマの連続巻上と 1コマ撮影を可能としていたが、やはりこのワインダーもレリーズまでのタイムラグが大きく、現代となってはあまり使い勝手は良くないものとなってしまっている。

使用履歴

中学一年のときに買ってもらって初めて手にした一眼レフカメラ。それが PENTAX ME であった。両親と行った今はなき『カメラのドイ』新宿西口店で店員に勧められるままに SMC PENTAX-M 50mm/F1.4 付で購入した。初めて手にする一眼レフカメラは、とにかくファインダーにしろレンズにしろ、ガラスの塊であることがひたすらに嬉しくて、日がな一日眺めていた記憶がある。その頃はまだ一眼レフにマニュアルとオートの区別があることや、露出制御にシャッタースピード優先と絞り優先の違いがあることなどは何も知らなかったが、まさにそういったユーザーをターゲットにしていたカメラが PENTAX ME であり、『カメラのドイ』の店員の客を見る目はある意味正しかったわけだ。

以後、PENTAX KM を購入するまでの間、かなりの枚数の写真を撮ったと思うが、写真の世界にのめりこめばのめりこむほど、中学生の子供心にはこの絞り優先専用機はつまらない存在になってしまっていったものである。今となって考えれば、こんなに小型軽量で楽チンなカメラはなく、手元にある ME がカンペキに動作してくれていれば結構な頻度で使われることは間違いなしなのだが、その辺の境地に至るまでには当時まだまだ若すぎたのだった。

小型化によるものか、発売直後のロットの問題か、単にこの個体がはずれだったのか、不幸にもこの PENTAX ME はかなり故障の履歴が多く、オート不良による修理を何回も繰り返していたが、メインの撮影機材がマニュアル機の KM に移っていくにしたがって、徐々に使われることもなくなりいつしか故障したまま置かれることになってしまった。そんなこともあって、持っていたワインダー ME も、大学時代に友人の持っていた当時最先端のデジタルサンプリングドラムと交換してしまった経緯がある。今となっては、コレクションとして取っておけば良かったものをと思うが、既に後の祭りである。

KM などは最近になって大枚を叩いて修理をしたりもしているが、既に IC 関連パーツが払底しているという点 (噂?) や、そもそもの故障の多さの記憶から残念ながら今のところ近々に修理をして復活させる方向にはない。それでも、自分の中では以後写真を趣味にしていく重要な役割を担った記念すべき一眼レフ第一号なので、その輝かしい地位はいつまでも揺らぐことはないのである。

...というわけなので、このホームページ上に PENTAX ME で撮影された写真は実は一枚も掲載されておりません。あしからず御了承の程を。

参考文献

『ASAHI PENTAX ME 取り扱い説明書』
『アサヒペンタックスのすべて』 朝日ソノラマ (1977年12月25日 初版発行)
『誰も言わなかったカメラ術』 楠山忠之著 青春出版社 (1978年8月10日 第一刷 / 1978年8月 20日 第17刷)
『季刊クラシックカメラ No.8 - 特集 一眼レフ魂の結晶 ペンタックス』 双葉社 (2000年7月15日 発行)
『アサヒカメラ ニューフェース診断室 - ペンタックスの軌跡 ペンタックス主な 21機種「診断室」再録』 朝日新聞社 (2000年12月1日発行)
『使うペンタックス』 中村 文夫著 双葉社 (2001年5月1日 第1刷発行)
『マニュアルカメラシリーズ10 ペンタックスのすべて』 竢o版社 (2002年1月30日 発行)


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