特徴など |
『全機能プロ仕様』というキャッチコピーを掲げ PENTAX LX は 1980年 6月に旭光学工業株式会社 (現 ペンタックス株式会社) の創立 60周年を記念するプロ用 35mm 一眼レフとして発売された。「LX」 はローマ数字の 60を意味するネーミングである。Kシリーズには K2、K2DMD というフラッグシップ機が存在したが、その後の Mシリーズにおいては小型軽量が最前面に押し出され久しくフラッグシップ機と言える機種が存在しなかった。満を持して発売された LX は、その高級システム カメラとしての完成度の高さ故に、2001年に惜しまれつつ生産終了となるまで 21年間の長きに渡り PENTAX 35mm 一眼レフのラインナップの中に君臨し続けた超ロングセラー機である。 LX のカタログ冒頭には LX の特徴として 4つの大きなカテゴリ分けがなされていた。
昨今の MF カメラブームにより、Nikon F3 の生産終了後急速に PENTAX LX の人気が沸騰し、さらに 2001年に LX の発売中止が発表されるとあっという間に在庫が店頭から姿を消したというのは有名な話だが、やはり LX を購入していた人は上記の防塵、防滴機能やハイブリッドシャッター機構の有難みを買っていたハードな野外撮影主体の人ではなかったのだろうかと思う。というのは、発売以来、自分が購入した以降の12年間余りを通しても自分以外に LX を使っている人を街で見かけたことは無いからだ。その一方で、カタログに載っていた水滴でびしょ濡れになった LX と、冷凍されてカチンカチンに凍った LX の写真に魅せられて LX を購入した山のぼらーは少なくなかったはずだ。 蛇足になるが、最初の慣れないうちは AUTOMATIC で薄暗いところで空写しをすると、ファインダー内に表示されているシャッター速度よりはかなり遅めのシャッターが切れたりシャッターが開きっぱなしになったりしてぎょっとする事がある。これはシャッターが開いたときボディー内の受光体はフィルムではなく黒いフィルム圧板上の結像の露出を測るためフィルム先膜の露光用パターンとの露出差が激しいためだが、もちろんカメラを明るいところに向ければすぐにシャッターは切れるし、明るいところであれば気がつかない程度のものである。これこそが IDM システムを実感する瞬間といったところだ。 |
使用履歴 |
PENTAX LX が発売されたのは中学3年の時だった。PENTAX ME や PENTAX KM を使って写真を撮りまくっていた時期でレンズも徐々に増えつつあったので、大衆機路線を行っていた PENTAX 初ともいえるプロ用システム一眼レフ (K シリーズのフラッグシップ機 PENTAX K2/K2DMD はファインダー交換ができなかったというのもあり) である LX は喉から手が出るほど欲しかったものだ。しかしながら、バイトもできない中学生に買えるような値段ではなかったため、実際に手にすることができるようになるまでは 11年の歳月を要してしまった。もちろん、その間にも買うことはできたはずだが、大学時代から社会人になったころにかけて別の方面の趣味に手を出していたし、クルマのローンもあったためカメラまではお金が回らず、結局、メインカメラとして約10年活躍してくれた PENTAX KM が事実上の引退を迎える頃、1990年にようやく LX に辿り着いたというわけであった。 LX 購入当初は AF280T などの専用ストロボは持っていなかったため、ストロボの TTL 自動調光など IDM システムの恩恵を受けることはそうそうなかったが、やはり山のぼらーの身として一番重宝したのは何をおいても防滴機能であった。山を歩いていても、カヌーを漕いでいてもちょっとやそっとの雨や水はねは気にする必要がないという安心感は何ものにも替えがたいものである。また、気温氷点下 20度の春山で強風を受ける稜線 (体感温度はさらに 5度ぐらい低いはずだが...) にあっても、きちんと動作する頼もしさも非常にありがたい。 LX を使用していて日常的に「いいな」と感じるのは、ファインダーの圧倒的な明るさとフィルム巻上げレバーのスムーズさであろうか。特に 2000年に限定発売された PENTAX LX2000 に搭載され、その後単独商品化されたナチュラルブライトマットにフォーカシング スクリーンをつけ替えた時のファインダーの見易さは特筆ものである。このボディーに smc PENTAX-FA 77mm/F1.8 Limited のレンズを初めてつけてファインダー像を見た時の衝撃はいまだに忘れることができない。 山、川での酷使にも関わらず購入から 10年後の 2000年に露出補正ダイヤルのゴム環が伸びて緩むまで、これといった故障は起こらなかった。生産中止もあってパーツが潤沢なうちにオーバーホールをしておかねばと思い、何度かメーカーのサービスでチェックしてもらっても、「まだ状態がよいので開けない方がいいんじゃないですかね。」などと断られる場面もある程であったが、2003年、遂に低速のシャッター速度が耳で聞いても分かるほどに不安定な状態となり、20,570円をかけて晴れてオーバーホールとなった。 2001年に PENTAX MZ-S を購入して以来、さすがに犬の写真のように動きの大きなものを撮るには MF では辛いこともあり日常的な LX の出番は減っては来たものの、相変わらず山はもちろん、秒間 5コマのモータードライブが必要な際などには登場願っている。 |
参考文献 |
『PENTAX LX 使用説明書』 『PENTAX LX (カタログ)』 (1991年5月現在, 1993年8月現在) 『アサヒペンタックスのすべて』 朝日ソノラマ (1977年12月25日 初版発行) 『季刊クラシックカメラ No.8 - 特集 一眼レフ魂の結晶 ペンタックス』 双葉社 (2000年7月15日 発行) 『使うペンタックス』 中村 文夫著 双葉社 (2001年5月1日 第1刷発行) 『ペンタックス LX 完全攻略』 中村 文夫著 学習研究社 (2001年12月28日 発行) 『マニュアルカメラシリーズ10 ペンタックスのすべて』 竢o版社 (2002年1月30日 発行) |
PENTAX KM PENTAX K2DMD PENTAX MX PENTAX ME PENTAX LX PENTAX MZ-7 PENTAX MZ-S PENTAX 67 PENTAX 67II FUJI GS645S Professional FUJIFILM TX-1 RICOH GR1s