夜半雪(積雪 1cm)、快晴、のち昼頃から曇り、のち雪
起床(6:30) → 朝食(7:25) → Pheriche (4,215m) / Himalayan Hotel 発(8:20) → 4,400m の峠で写真たて(8:40〜9:05) → Dingboche (4,350m) / Mountain Paradise Lodge 着 for 昼食(9:20) → Mountain Paradise Lodge 発(10:35) → たて at 4,400m (10:50〜11:00) → 写真たて(11:20〜11:35) → たて at Sunset Hotel (4,650m)(12:05〜12:20) → Chhukung (4,730m) / Sun Rise Lodge 着(12:50) → 夕食(19:00) → 就寝(20:30)
(Pheriche 〜 Dingboche 歩程: 1時間 / Dingboche 〜 Chhukung 歩程: 2時間15分)
ようやくケサブ君も起きてきて朝メシを食い、やや遅めの 8時20分にロッジを後にする。天気はド快晴である。大きな風力発電用のプロペラの回る、ヒマラヤ救助協会 (Himalayan Rescue Association) の建物の脇を通って、一気に山腹に上がっていくルートをとる。夜半に降った雪は 1cm ほど積もっていて、TRB は靴が滑ってしまって登るのに苦労している。ところで、ヒマラヤに来てまず驚くのは、トレッキング中に見かけるポーターやガイドの靴が、多くの場合ただのスニーカーだったりすることである。もちろんケサブ君はちゃんとしたトレッキングシューズをはいているが、TRB は底がペラペラ、溝も殆どないスニーカーで歩いているし、サンダルで歩いていたりするガイドを見かけることもある。まぁ、彼らにとってはこの地域は庭みたいなもので、わざわざ庭を歩くのに仰々しい登山靴やトレッキングシューズなどちゃんちゃらおかしくって履けるかよ、ということなのだろう。それにしても、あの大荷物をその程度の靴で荷揚げしてしまうのだから、やはりポーターの力は侮れないのである。それに比べて、ロッジの主人などはやはり金回りがいいのだろうか、ピカピカの Nike のスニーカーなど履いていたりするが、わざわざヒマラヤまで来てそういうのを見てしまうと、なんだかちょっと興ざめしてしまうというのもあったりする。 |
ケサブ君はお湯をもらって頭を洗ったそうで、すっきりした顔をしている。ナムチェバザールでの高度順応のための停滞日にシャワーを浴びて以来頭を洗っていないので、もう既に一週間以上、8日も頭を洗っていないことになる。トレッキングに入って以来ずっと着っぱなしのダクロン QD のラグシャツも、既に首の周りは真っ黒だ。あれだけ砂埃にさらされれば仕方がないが、空気が乾燥しているため不思議と日本の山にいるときほどは臭くない (と、思うのだが...)。着替えも持っているが、ナムチェバザールまで下りてシャワーを浴びた後に着替えるためにとっておこうと思っている。早くナムチェに下ってシャワーを浴びたいものだ。もちろん途中のロッジでもホットシャワーがあるところもあるのだが、大抵はロッジの外にある掘っ立て小屋の上に大きなバケツが乗っかっているというもので、よしんばそのバケツにお湯が入れられたとしても、寒くてシャワーどころではないであろうことは一目瞭然なのである。
食後、ぷらぷらとロッジの周囲の写真を撮り歩く。どこのロッジも売店を兼ねているので、建物の登山道に面した側には大抵入り口とは別に売店が作られている。このロッジにも売店があり、そこでは一番下の娘が店番をしていた。写真を撮ってもよいかどうか訪ねると、きっぱりと断られてしまった。まぁそういう年頃なのだろうが、この地方の人たちは写真に撮られるのを極端に嫌うというのもガイドブックで読んでいたので、そういうことなのかもしれない。
ディンボチェを出て、前回下痢を押して登ったときとは打って変わって気楽に写真をとりながらのんびりと進む。ケサブ君も TRB も既にカラパタール (Kala Pattar / 5,545m)、エベレストベースキャンプ (Everest Base Camp / 5,350m) の二大目標を達成しているためか、肩の力が抜けてとてもリラックスしている表情をしている。途中の大きな平らな石の上で三脚を広げてアマダブラム (Ama Dablam / 6,812m) やローツェ方面の写真を撮っていると、中学生ぐらいの年齢の少年が 3人やってくる。TRB が覗いていた双眼鏡を彼らに貸してやると、3人とも大喜びで順番に双眼鏡を覗いている。トレッキングを通してこの双眼鏡は、現地の少年たちとのコミュニケーションツールとして大活躍した。もちろんケサブ君と TRB の撮影待ちの時間つぶしツールとしても絶大な威力を発揮したのであるが。
ダイニングで少し休んでからカメラを持って外に出ると、さっきまで晴れていた空はどんよりとしていて気温も随分下がってきている。山は既にガスに隠れているか、背景の雲と山肌の雪とのコントラストが何もなく写真にならない。写真も撮れないし、寒いし、仕方がないので部屋に戻ってフリースをザックから出して着込む。ダイニングに戻るために部屋から外に出ると、ちらちらと雪が降り出した。今日は昨日よりもさらに降りだすのが早い気がする。
ダイニングではケサブ君と TRB がロッジの子供と遊んであげている。本当に子供好きな人たちなのだ。雪が降ってきたのでストーブも点いた。今日の宿泊客はどうやら我々 3人だけのようなので、3人でストーブの周りに集まってチョコレートやドライフルーツなど、もう多分使わないであろう非常食の一部を消化していく。残ったドライフルーツをもらったロッジの子供は大喜びしている。
14時ぐらいから雪がいよいよ本降りになってくる。トレッキングに入って以来一番の降りだ。風も強く、頭の上にある天窓の隙間から、時々粉雪がパラパラと落ちてくる。外にも出られないので、ひたすらカメラと双眼鏡の掃除をしながら、ケサブ君と TRB と話をする。登山靴の話になり、今回使っているマインドルの靴が、ケサブ君の年齢よりも歳をとっていることを聞いて彼は唖然としている。一方、TRB には、出発前に友人から真偽を確認するように言われた、『シェルパ族が好んで食べる、食べても辛い出しても辛い激辛饅頭』の存在について教えてもらう。セッパと呼ばれるその食べ物は、唐辛子を肉、ジャガイモ、野菜、バターなどと一緒に混ぜて丸めて、蒸かしたり揚げたりして作るのだそうで、存在は無事確認されたわけだ。残念ながら TRB は持ち歩いていないようなので、味見をすることはできなかった。もう一つ別の友人からもって帰るように言われている、『イエティのウンコ』についてはもちろん彼らには所在を聞かなかったが、どのみち探そうにも、ルート上にはヤクとウシと馬とイヌと人間のウンコが入り乱れて落ちているので、はっきり言ってその中にイエティのブツが混ざっていたとしても判別は不可能なのだ。ということで、こっちのリクエストは自動的に却下なのだ。
今日は昼メシを 10時前に食っているので、16時ぐらいになるとすっかり腹が減ってしまった。夕食までにはまだ時間があるのでどうしたものかと考えていると、TRB がキッチンに行ってポップコーンを作ってきてくれる。ポップコーンを食べながら、喉が渇いたなぁと思ってメニューを眺めると、そこにはなんと「Green Tea」の文字が。トレッキングに入って初めてだ。今回の装備計画にお茶が漏れていたのは実は重大な過ちで、いつもは食料計画を立てるために必ずセットでお茶が入るのだが、今回は食料が非常用のラーメンだけだったために、すっかりお茶をもってくるのを忘れてしまったのだ。嬉しくなって「Green Tea」の在庫が本当にあるのかどうかをケサブ君に確認してもらう。「ある」との答えに焦って「じゃぁお願い!!」と即答してしまったのがよくなかった。一番大切なことを言い忘れてしまったのだ。
ドキドキしながら出てきたお茶を飲んでみる。やっぱり... 出てきたのは砂糖入りの緑茶なのだ。
あまりのショックに肩を落として窓際に行き、外を見ると相変わらずの大雪でまったく降り止む気配はなし。17時15分現在で既に 3cm 以上は積もっている様子である。今晩こそは月明かりに光るアマダブラムを写真に撮りたいと思っているのだが、明け方までに止んでくれるだろうか...。ここまで天気が荒れてくるということは、カラパタール (Kala Pattar / 5,545m) からの下りで見た雷鳥似の鳥は、ホントにヒマラヤ産の雷鳥だったのかもしれない。
ケサブ君と TRB はダイニングの窓際のベンチ兼ベッドで寝る準備をしている。ロッジではこの寝場所にもそれなりに値段がついている。ダイニングにはストーブもあるが、食事の時間が終われば消えてしまうし、窓際は当然隙間風も入ってくる。昼間 TRB に新しいのをあげる約束もしていたので、彼らにホカロンを一つずつ支給。ケサブ君も TRB も「やった〜!!」とばかりに嬉しそうに封を切っている。
部屋に戻って 20時半に寝る。
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