ヒマラヤトレッキング日記
〜 往路編 〜


2004/3/24 (Wed)

自宅(八王子)発(12:20) → 多摩センター駅着(12:30) → 多摩センター駅発 by エアポートリムジン(12:50) → 成田空港第1ターミナル着(15:15) → チェックイン完了(16:00) → 搭乗開始(18:00) → 成田空港 TAKE OFF (19:00) → BANGKOK Don Muang 空港 LANDING (23:00) → Comfort Suite Airport Hotel 着(24:00) → 就寝(24:45)

「すごい荷物」

さて、というわけでとうとう出発の日を迎えてしまった。予定通り京王多摩センター駅から 12:50 発のエアポートリムジンに乗るために、最寄駅から徒歩 15分のここ自宅から駅まで大量の荷物を持って歩く気は端からまったく無く、12:20 にタクシーに迎えに来てもらう。練習どおり、10年保障付の PFC (Products Finishing Corporation, Brooklyn USA) 製の旅行用カートにトランクとその上にカメラザックを縛り付け、背中にフィルムを入れたディパックを背負い、肩にカメラ一式を入れた小型の旅行カバンを下げて部屋を出る。エレベータを降りてタクシーまでのスロープを下っている時点で既に荷物が一度倒壊。さらにタクシーのトランクには全然入らず、後ろの座席に荷物と一緒に乗り込むことになる。
「うーむ、こんなんでカトマンズまで無事にちゃんと着けるかなぁ...」
というのが出発直後の最初の感想。

10分程で多摩センター駅のリムジンバス乗り場に着く。チケットは京王プラザホテルの中で購入できる聞いていたので苦労して購入するが、別にバスに乗るときでも乗った後でも買えるようだ。荷物を預けて後はバスに乗り込むだけ。バスは聖蹟桜ヶ丘駅を経由して新たにお客さんを乗せ、一路成田空港に向かう。渋滞もさほど激しくなく、多摩センターから 2時間半弱で無事成田空港に到着。ここからは空港備え付けのカートに荷物を載せてしまえるので楽チンだ。

「げげげの超過料金」

仕事でアメリカへ行っていたときもそうだったが、例の 9.11 のテロ事件以来ノースウェスト航空の荷物チェックはとても厳しい。しかも今回は異様に荷物が多いので、チェックイン前のスポットチェックの全荷物検査を当然のように食らってしまう。せっかくきれいにパッキングした荷物を全部あけられてぐずぐずにされるのは非常に辛いのだが仕方ない。結局、すべての荷物をあけさせられ、電源の入るものはすべて電源を入れさせられ、スポットメーター (露出計)など細かく用途までも説明しする。ここで持っていたライター 3個のうち 1個は置いていく羽目になる。チェックインする荷物にはライターは入れられず、手荷物では 2個までのみとのこと。また、チェックインする荷物に入れてあったヘッドライトの電池も抜かなければならない。とにかく細かいのだ。

ようやく荷物検査が終わりチェックインの列へ。ビジネスクラスなのですぐ順番は来たがここでぬあんと 5.3KG の重量超過。自宅で荷物の重さを計ってシミュレーションした後から着ていくのをやめて追加した FoxFire のゴアのシェル、そして、我が家の秤との微妙な誤差などから甘く見ていた 1〜2KG の重量超過を大幅に上回ってしまったのだった。しかも、チェックインカウンターの女性は日本人ではないアジア系の人 (日本の空港なのに...) で日本での仕事に熱心であるがためかあまりにも融通が利かない。壊れかけているスーツケースやカメラザックの外側に縛り付けてあるストックなどもことごとく指摘され、すべてにガムテープをぐるぐる巻きにすることを要求される。まぁ、それはそれでこっちも心配が減ってありがたいからいいが問題は荷物の重量超過である。こっちは畳んだカートを含めて既に手荷物を 3個も持っているため、中から何かを取り出して重量を減らすなど問題外であるという断固とした態度で正当的に挑んでくるカウンター嬢なのであった。

結局、あれこれ交渉するも空しく、12,900円の超過料金を支払うことになりチケットカウンターへ。ヤケクソでこれもマイレージで払えないものかどうか聞いてみるが非情にも一蹴される。当然クレジットカードで支払い。どうあっても今ここで貴重な現金を失うわけには行かないのだ。あれやこれやで空港について 45分ほどでようやくチェックインが終了。

いきなり出だしで躓いてしまったショックはかなり大きく、この後、後払いのカード会社の保険だけでは不安が残っていたので空港で入ろうと思っていた旅行保険のことなどすっかり忘れて、でも半ば放心状態のまま 5,000円相当額のタイバーツを購入。Rate は JPY 3.13 = TB 1.00 で 1,500 バーツを購入。そしてとぼとぼと近くにあった日本食レストランに入り、軽くにぎり寿司を食べながら重量についての認識の甘さを反省した後、気を取り直して現地でガイドとポーターのシェルパに最初に渡すお土産を探しに行く。なにせ 16日間も一緒に歩く二人なので、最初にお土産を渡して気分良く仕事をしてもらえればと思ったからである。あれこれ考えたが、カトマンズは暑そうなので扇子を買うことにした。ひとつ千円の扇子を二つ購入して出国ゲートへ向かった。

ノースウェスト航空のラウンジを出て搭乗したのが 18時。マイレージでビジネスクラスの航空券を購入したので席は 2Fだ。既に出発時間間際なのに何だかあたりが騒がしい。地上整備員が慌しくコックピットを出入りしている。
「なんだなんだ? トラブルか? 勘弁して欲しいなぁ... これでもバンコクの到着は 24時近いんだからこれ以上遅れないでくれよなぁ...」
と思っているとどうにかこうにかケリが着いたようで、結局 NW027便は定刻から 10分程度の遅れで成田を離陸したのであった。これまで、何度と無くノースウェスト航空の便に乗っているが、結構出発前のチェックが厳しいらしく、こういうことは割と良くある。でも、その厳しいチェックのお陰で何が起こっても絶対に落ちないのがノースウェスト航空で、また仮に何かがあっても必ず生還するのがノースウェスト航空の便なのだ。ついこの間も片方の脚が出ず片足で着陸したのに、飛行機が停止するまでほとんどの乗客は気がつかなかった、というのが確かノースウェスト航空の便であったと思う。というのも、パイロットに軍の出身者が多くて危機回避能力に優れているからではないだろうか、と勝手に信用して乗っているのである。

「いきなり洗礼」

とにかく、無事に成田を TAKE OFF。後は飛行機の中で、ガイドブックでネパール語の勉強をしつつ一路バンコクへ向かう。バンコク国際空港 (Don Muang 国際空港) には定刻よりやや早くほぼ 23時ちょうどに着陸。到着したのはバスゲートで、飛行機を出てタラップに足を踏み入れた瞬間にものすごい暑さと湿気が襲ってくる。
「あぁ、これは一番苦手なヤツだ...。早くこの国を出たいな...。」
と、ほぼ同時に直感する。ある一定の気温と湿度の組み合わせの中で、ものすごく自分の身体に消耗を与える組み合わせがあるのを昔からの経験上知っていて、まさにそこのツボにぴったりはまる気温と湿度なのであった。バスを降りて空港の建物に入るとさすがにそこは涼しい。でも、にこりともしない極めて横柄な入国審査官の入国審査を経てさらに印象は低下する。次は税関。ちなみに飛行機の中で入国書類をよく読むとそこにはフィルムを 5本以上持っている場合税関で申告せよと書いてある。タイで使うつもりはまったく無いが、なんといってもこっちはブローニーと 35mm フィルムをあわせて計 84本のフィルムを持っているので、ここで何も言わずに素通りしたとしても出国時に何か言われると面倒なことになりかねない。仕方が無いので、一応「課税」の赤いカウンターに赴き、実はこれこれしかじかで今晩一晩のトランジットのための滞在で、フィルムを大量に持っているがそれはネパールですばらしい景色のヒマラヤを撮るつもりのもので、タイの風景など撮るつもりは毛頭ないのだ、というようなことを英語で説明すると、あっさり笑顔で通してくれた。税関の人はいい人だ。この時点で一勝一敗。その後、なんとまたスポットチェックの X線荷物検査に引っかかる。フィルムは X線検査に通したくないのでこれを主張すると、ここでもあっさりフィルムだけは免除してくれた。でも、3台のカメラと 4本のレンズの入ったカバンを X線検査にかけた検査員はちょっと怪訝そうな顔つきをしている。で、また同じ説明をすると笑顔で OK とのこと。よしよし。二勝一敗だ。

問題はその次だ。飛行機の中ではネパールのことばかり考えていたため、バンコクのガイドブックについては勉強不足で、公営タクシーの受付カウンターは空港の建物内にあると思い込んでしまっていた。しかし、実は建物の中にあるカウンターはハイヤーの会社のもので、公営タクシーのものではなかったのだった。しかも高らかに ISO9001表示を掲げていたために、あっさり騙されてしまった。暑さと湿気と疲労で頭が回転していなかったのかもしれない。また、そのすぐ外側の柵の向こう側で山のように群がるタクシーの呼び込みを見て相対的に判断してしまったのかもしれない。或いは他にも 2組ほどの外人がカウンターに来ていたため油断したのかもしれない。とにかく吸い込まれるようにそこのカウンターでホテル名を告げてしまった。すると、250バーツ (以下 B との答え。タクシーはメーターでバンコク市内まで行っても 200B を超えることはない、とガイドブックに書かれていたのも、メータータクシーなのだから先払いのはずが無い、ということも、頭のどこかにはあったのだが、その場で脳のその部分に咄嗟にアクセスすることができなかった。で、言われるがままに 250B を差し出し、言われた柵の外側のカウンターに向かう。手に持った予約票の紙を見て、辺りの呼び込み屋たちが「あらま...」という顔をしているのを見た頃に、
「あ、なにか初歩的かつ決定的な間違いを犯してしまったのだな...」
と、ようやく回転が始まった頭で考えるに至ったのだった。

ともあれ、「柵の外」のカウンターで待つこと数分、ことさら無愛想なドライバーが現れてクルマに案内してくれる。
「げ、ベンツだ。しまったなぁ。高いタクシーになってしまった...。」
しかも今回トランジットのためだけに予約したホテルは空港からすぐ近くの Confort Suite Airport Bangkok で、タクシーでものの 5分程度。メーターで行けば 45B もかからない距離にあるところ。そこに 250B も払うバカがここにいる。重量超過に次ぐショックに打ちひしがれながら程なくしてホテルに着いた。ドライバーはトランクは空けても突っ立っているだけで荷物を降ろすのを手伝おうともせず、ホテルのドアマンが助けに来てくれる。まったく ISO9001とは何なのか。やっぱりそういうものを掲げているところに限ってこういうことになるのだろうな、と静かに悟りつつチェックイン。ここまでで二勝二敗だが、二敗目はかなり痛烈に効いた。入国早々いきなりバンコクの洗礼を受けた形だ。この時点でタイ、特にバンコクの印象は既に最低。

ホテルの入り口から入ったロビーは日本で言う地方の観光ホテルといった雰囲気。可もなく不可もなくといった感じで、フロントデスクでオクトパストラベルでゲットしたバウチャーを差し出すと手早く処理をしてくれて、明日の飛行機に合わせて 8時に無料のシャトルバスを出してくれること、朝食は朝の 5時から食べられることなどを丁寧に説明してくれる。こちらからはモーニングコールを 7時にお願いする。タイの人と初めて精神的に対等な会話が成立した感動の瞬間であった。先ほどのドアマン兼ベルボーイが荷物をカートに載せて部屋まで案内してくれる。部屋番号は #513 どことなく不吉な響きのある部屋番号だが...。5F でエレベータを降りると廊下はむっとした空気。ロビー以外の廊下には冷房が入っていない。でも、それよりも何よりもものすごく廊下が暗いのだ。廊下の天井には 5メートルおきぐらいに小さな電球がひとつずつ埋め込まれているだけで、部屋番号を確認するのにも暗すぎてよく見えない程なのだ。ひょっとして、このフロアは使われていないんじゃないかと思ったりする。やっと目当ての部屋番号を暗闇の中で探し当て、鍵を開けて部屋に入るとさらにむっとした空気。近頃日本でもよくあるルームキーを所定の場所に挿さないと電気が入らない仕組みのため、部屋の中は宿泊客が入るまで冷房は入らないのだ。ベルボーイの帰った後、その部屋の恐ろしいほどの熱気の中で一応今晩の宿泊に必要な荷物だけカバンから出し、明日の朝に備えてさっさと寝る準備をする。飛行機は 10時半だから 8時半までには空港に入らねばならない。7時にモーニングコールが来る。

さて、寝る体制に入っても、ホテルはバンコク国際空港の滑走路のほぼ延長線上にあるため夜中中頭の上を飛行機が離陸していき比較的浅い眠りが続く。バンコク国際空港は街中にありながら 24時間空港だったのだ。さらに部屋の冷房はとても強力であっという間に部屋が涼しくなったのはよいが、風が直接ベッドに当たるため点けたままだと寒くて寝られない。しかし、消すと今度は部屋の中があっというまに灼熱湿度地獄と化しそれこそ睡眠どころではなく、またすぐに点けなければならない。ということを繰り返すうちに夜は更け、そして窓の外は徐々に白んでくるのであった...。

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