FUJI GS645S Professional


名称: FUJI GS645S Professional / フジ GS645S Professional
発売年月: 1984年
形式: セミ判距離計連動式カメラ
画面サイズ: 645判 (実画面寸法: 56×42.5mm)
レンズ: EBC フジノン W60mm /F4.0 (5群 7枚構成, 対角線画角: 60度, 35mm判相当 37mm, フィルター径: 49mm)
シャッター: コパル #00 メカニカルレンズシャッター (T, 1〜1/500秒, セルフタイマー)
シンクロ: X接点, X (ホットシュー)
ファインダー: 採光式ブライトフレーム (パララックス自動補正, 倍率 0.5倍, 視野率 91%@1m / 90%@∞, 基線長 40mm/有効基線長 20mm, LED 3点露光レベル表示)
距離計: 二重像合致式連動距離計 (連動範囲: 1m 〜 ∞)
露出制御: 外光式マニュアル測光 (受光部: ファインダー内部に内蔵, シャッターボタン半押しで ON)
受光素子: GPD 受光素子 (連動範囲: EV4〜EV18@ISO100)
露出表示: LED 3点定点合わせ (+/○/−)
感度設定: ISO25〜ISO1600 (1/3 クリックストップ)
巻き上げ: 上部レバー式 184度 1回巻き上げ (予備角 28度, シャッターセルフコッキング, 120/220 切り替え式)
使用電池: LR44 × 2
その他: レンズプロテクター付, パームブリップ付, 圧板 120/220 切り替え式で裏蓋に切り替え表示
サイズ/重量: W147×H114×D90mm / 766g (電池別)
FUJI GS645S

特徴など

1984年に富士写真フィルム株式会社より発売された FUJI GS645S はフィルムフォーマット 6cm×4.5cm のセミ判にあって、重さわずかに 766g という超軽量のボディーに、新設計の EBC フジノン W60mm/F4.0 を装着したマニュアルフォーカス、機械式レンズシャッターの中判カメラである。

ボディーはプラスチックで成型されており、グリップやレンズ保護のためのプロテクターが付けられているところが外見的な特徴である。ファインダー像は縦長で普通にカメラを構えたときの画面が縦位置となる。そのため、クリップオン型のストロボをホットシューにつける場合にはストロボの照射角と画角とが合わなくなってしまうことがあるため、シュー部分を 90度回転させるストロボブラケットが別売されていた。これにより、常に画面上部からストロボを照射することが可能になる。ちなみに、このクリップの中にはブローニーフィルム一本を収納することもできるというおまけ付でもある。

ファインダーの有効基線長が 20mm ということもあり、二重像は非常に見難く、二重像合致式のピントあわせが素早くできるようになるためにはある程度の慣れが必要とされる。目を確実にファインダーの中央に置くことが二重像を見やすくするコツである。

付属の EBC フジノン W60/F4.0 のレンズはさすがに定評のあるフジノンレンズの新設計だけあって、その写りはシャープネスも色も素晴らしいものがある。また、レンズシャッター式であるため、全シャッター速度でストロボの同調が可能である点もありがたい。さらに、フィルム装填のしやすさは特筆すべき点で、PENTAX 67 と比較しても格段に装填が楽だし、いわゆるフィルムフォルダーを使用するものとは、もちろん比較にならない装填のしやすさであると言える。

一方、シャッター速度、絞り、ピントリングがレンズのレンズの鏡胴部分に同軸に配置されているところは、これも慣れるまでに多少の時間を必要とする点である。特に、ISO 感度設定のダイヤルが絞りのレバーのすぐ近くに配置されているため、気がつかないうちに ISO 感度設定がずれてしまっているということも何度か経験している。

このカメラの最大の特徴はやはり『超軽量なセミ判カメラ』というところにあるわけなので、特に重量が問題となる登山にもって行く場合には抜群のパフォーマンスを発揮するが、実は軽すぎることに加えて、若干重めのシャッターボタンのせいで手持ちでの低速シャッターはかなり辛いものがある。上記の理由に加え、せっかくの中判なので被写界深度も充分にとりたいということもあり、結局は三脚を持っていかざるを得ないところがみそである。

使用履歴

1994年の暮れにヨドバシカメラ西新宿店にて購入。中判カメラの世界へのめりこむきっかけとなったカメラである。上記したように、とにかく軽くてフォーマットがでかくてよく写る、ということがとても感動的であったカメラで、中判カメラのメインが PENTAX 67 に移った以降についても、荷物の重量がかさむときや、PENTAX 67PENTAX 67II のサブカメラとしても 2004年のヒマラヤトレッキングまで、バリバリ現役で活躍した、とても重宝していたカメラである。レンズシャッター故に、電池の消費も極端に少なく、また、マニュアル式の簡素な作りである故に故障も少なかったのだが、1996年、カナダのジャスパーにて、人間もろとも崖から転落した際に上部カバー部が大破。上カバー部の交換と距離計部の一般修理を行った。ちなみに海外旅行中であったため保険で修理できたが、修理費は 10,300円。その後はまた故障もなく長年過ごしてきたが、2002年の白馬大雪渓にて岩にぶつけてシャッター部が故障。シャッター部交換、ヘリコイド部調整、後枠、前枠部調整で 20,000円の大修理となったが、そのとき以前から既に破損していたレンズフード、アイピースのカバーについては、在庫の部品が既になく修理不能となった。

2004年の 3月から 4月にかけてのヒマラヤにトレッキングでは、ヒマラヤの凄まじい強風ゆえにファイダー内の二重像合致部分に砂埃が入り込んで、ピント機構が不良となったが、現地にてファインダーを分解して掃除すると元に戻った。この辺りが単純な作りゆえの強みだったのだが、既にこの時点では露出計の表示がおかしくなっていたようで、ヒマラヤで GS645S で撮影した写真は残念ながらかなり露出オーバーのものが多くなってしまっていた。さらに、帰りのタイのバンコクで、プラスチックのボディーカバー部に穴が空いてしまっているのが発見された。幸いボディー暗箱内に光が漏れてきてはいないが、防水の面からもここが修理できない場合には今後の使用は難しい状況となってしまった。もちろん露出計の再調整と共に富士フィルムのサービスに修理に出す手もあるが、既にパーツ保有期間を過ぎているし、随分長い間頑張ってもらったし、そろそろこのまま隠居生活に入ってもらうべきかどうか、現在悩んでいる状況である。

参考文献

『FUJI GS645S Professional 使用説明書』
『FUJI GS645S Professional (カタログ)』(1994年10月現在)
『中型・大型カメラ入門』 日本カメラ社 (1993年8月10日 初版発行 / 1999年5月18日 重版)


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