PENTAX 67


名称: PENTAX 67 / ペンタックス 67
発売年月: 1969年 7月
形式: 6×7判一眼レフカメラ
使用フィルム: ロールフィルム
120タイプ: 10枚撮り
220タイプ: 20枚撮り
画面サイズ: 55mm×70mm
レンズマウント: 専用ダブルバヨネットマウント (内爪、外爪)
シャッター: 電子制御式フォーカルプレーンシャッター
1〜1/1000秒、X、B
シンクロ: FP、X ターミナル (JIS B型)
ストロボ同調: X、1/30〜1秒、B
ファインダー: 交換式 (ボディー側視野率 100%)
アイレベルファインダー (別売: TTL ペンタプリズム、ペンタプリズム): 視野率 90%、像倍率 1.0× (105mm、∞)、視度 -1D
フォーカシングスクリーン: マイクロプリズム式
ミラー: スイングバック式クイックリターンミラー (ミラーアップ機構付き)
露出モード: マニュアル
測光方式: TTL 平均全面測光 (TTL ファインダー装着時)
受光素子: 初期型: CdS 後期型: SPD 測光範囲: EV2.5〜19 (TTL ファインダー装着時)
感度設定: ASA/ISO12〜ASA/ISO3200
巻き上げ: レバー式 (巻上げ角 180度、予備角 10度、スタートマーク合わせによるオートマット式、セルフコッキング)
フィルムカウンター: 自動復元順算式
使用電池: 6V (4LR44 または 4SR44)×1
バッテリーチェック: 押しボタン式ランプ表示
サイズ/重量: W177×H101×D91mm / 1.29kg (ボディーのみ)
W177×H152×D91mm / 1.76kg (TTL ペンタプリズム付き)
PENTAX 67 w/TTL ペンタプリズムファインダー + グリップ + 水平儀 PENTAX 67 w/固定ピントフード + グリップ + 水平儀 PENTAX 67 w/TTL ペンタプリズムファインダー  + グリップ + 水平儀 + smc PENTAX 67 75mm/F4.5

特徴など

1969年の7月、旭光学工業株式会社 (現 ペンタックス株式会社 が 1966年秋のフォトキナでアサヒペンタックス 220 として初めて中判カメラを発表してから実に 3年近い歳月を経て、まさに満を侍して発売されたのが PENTAX 6X7 である。35mm 一眼レフカメラをそのまま大きくしてペンタプリズムを標準装備したスタイル、電子式フォーカルプレーンシャッターを搭載した点など当時としては画期的な中判カメラの発売であったはずだ。

以後、PENTAX 67II が発売される 1998年までの 30年間に渡り、いくつかの仕様の変更は行われたが基本的な部分は殆ど変わらずに発売され続けたロングセラー機である。大きな変更点としては、1972年に巻上げレバーの大型化、1976年にミラーアップ機構が追加され、1989年には名称を PENTAX 6X7 から PENTAX 67 に変更し同時に外観も若干変更された。TTL 露出計も、初期型は受光素子に CdS が使われていたが、後にレスポンスの早い SPD に変更されている。また PENTAX ES の時期には対数圧縮をかけるように変更が加えられたという。これらのほかにもプロカメラマンやユーザーのフィードバックが反映された細かい変更はいくつも行われ、それらのフィードバックは確実に PENTAX 67II に受け継がれていったのであった。

PENTAX 67 の最大の特徴は 35mm 一眼レフをそのまま大きくしたフォルムによる機動性だが、TTL ペンタプリズムファインダーを装着した場合のボディーのみでも 1.7kg 以上、さらに 105mm/F2.4 の標準レンズをつければ総重量は 2.3kg を超え、肩から提げて歩くだけでもかなりの重さである。この重さゆえに撮影時にボディーをホールドする、またカメラを構える動作そのものにもそれなりに腕力が必要で、そういう意味から木製のグリップは必需品である。これをつけることで、重量はさらに 235g 増えてしまうのだが、縦位置でカメラを構えるときには左手の腹にこのグリップを当てることでピンと合わせの動作が格段に楽になるのである。ミラーショックももちろん大きいので、被写界深度が必要な場合には、三脚に固定してのミラーアップが必須となる。三脚も丈夫なものでないと確実にブレを生ずるので、結局、機材総重量は膨れ上がるばかりである。可能な限りクルマで移動できるに越したことはないのだが、レンタカーで移動ができる海外旅行であっても、往復の飛行機で機内に機材を持ち込むのはやはり相当苦労するもので、バックアップ用の PENTAX LX や、パノラマ撮影用の FUJIFILM TX-1 などを機材に加えてしまうとあっという間にカメラバッグはものすごい重量となってしまうので、これを手荷物として持ち込むには色々とテクニックが必要になってしまう。

平均測光の TTL ペンタプリズムファインダーでの露出は多少予測が難しい面もあり、単体のスポットメーターを持っていた方が安心できる。また、TTL ペンタプリズムファインダーとボディーの電子式フォーカルプレーンシャッターはどちらも本体内の電池を電源として使用することから、実は電池の減りが結構早いのがこのカメラの特徴で、TTL ペンタプリズムファインダーには電源を自動でオフにする機構が付いてはいるが、夜間にバルブ撮影などをすると、一発で電池がなくなってしまう。海外では 4SR44 という電池を探すのが実は結構大変で、長期で出かけるときには電池のスペアをかなり持っていく必要がある。ちなみに電池がなくなるとミラーアップしたまま戻らなくなるという仕様も 1970年に追加されたものである。

いずれにしてもスポットメーターを使うということであれば、視野率 100% を得るために固定ピントフードを取り付けるというのも手である。これによりより倍率の高い驚くほど美しいファインダー像を見ることができる。当然のことながらウェストレベルでの撮影となるため 35mm 一眼レフ感覚での撮影とは少し変わった趣となり、これもまた良い。

あと、67レンズ用アダプター K を使うことで、PENTAX の 35mm 一眼レフでは絞り込み測光で 67 のレンズが使用できるので、カメラバッグに PENTAX の 35mm 一眼レフのボディーを一台放り込んでおくだけで、バックアップシステムができるところは非常にありがたい。

使用履歴

1996年12月にヨドバシカメラの新宿西口本店にて購入。つまり我が家にあるのは 1989年の変更後のボディーである。1994年の暮れに購入した FUJI GS645S Professional を 2年間使って中判カメラにすっかり味をしめ、とうとう我慢できなくなって TTL ペンタプリズムファインダー、smc PENTAX67 55mm/F4、smc PENTAX 75mm/F4.5 と共に買ってしまったのだ。それ以来、風景撮影用のカメラの中核をなすシステムとして年々レンズその他のアクセサリーも増強され、PENTAX 67II の購入へと続いていくきっかけとなったカメラである。

とにかく重い、というのが PENTAX 67 を一言で表す言葉であろうか。山に持って行くにしても、飛行機の機内に持ち込むにしても、三脚を持っていくにしても、とにかく何をするにも重量が嵩むのである。それでも、この重いカメラで撮る 6×7cm のフォーマットは、現像の上がったポジを一目見ただけで、それはもう感動モノなのである。ポジをフィルムスキャナーでスキャンして、PC のスクリーン上で拡大していけば、ルーペで覗いてもも見えなかった、撮影しているときにも気がつかなかったモノや、ジャンダルムの上にいる登山者などがきちんと写り込んでいるのを発見することができる。これはもう 35mm判のカメラでは到底不可能な領域なので、ただひたすらに、その解像度を得るためだけに、苦労してこの重い機材を持って歩くというのが、PENTAX 67 を敢えて使うのだということの正しい説明だろう。

購入後、これといった故障もなく順調に使い込んできたが、2000年7月にあろうことか、ちゃんと着けたと思っていたクイックシューの片側の溝がきちんとはまっていなかったことから、三脚上、地上約 1.5m の高さから落下。「修理不能かも知れません。」と言われながらも、ボディーのファインダー枠、巻上関連ギア、ミラーチャージギア、シャッター部バウンド防止機能、TTL ペンタプリズムファインダーのカバー、プリズム、回路基板など数多くの部品を交換してそれこそ大手術を行い、72,210円の修理費をかけ奇跡の復活を果たした。その後の後遺症からか、2001年5月、2003年9月にそれぞれシャッター幕精度不安定、TTL 指針部指示差などを起こし 2度にわたる修理 (計 45,000円也) を経験して現在に至っている。さすがに 2002年5月に PENTAX 67II を購入した後には出番は減ったが、相変わらず現役活躍中で、2004年のヒマラヤトレッキングでも登板候補に上がり、新宿のペンタックスフォーラムチェックに出したが、このときは特に異常はなく、今のところは元気にしているようだ。

参考文献

『PENTAX 67 使用説明書』
『PENTAX 67 TTL ペンタプリズムの使い方 (使用説明書)』
『PENTAX 67 折りたたみピントフード 固定ピントフードの使い方(使用説明書)』
『アサヒペンタックスのすべて』 朝日ソノラマ (1977年12月25日 初版発行)
『使うペンタックス』 中村 文夫著 双葉社 (2001年5月1日 第1刷発行)
『アサヒカメラ ニューフェース診断室 - ペンタックスの軌跡 ペンタックス主な 21機種「診断室」再録』 朝日新聞社 (2000年12月1日発行)
『マニュアルカメラシリーズ10 ペンタックスのすべて』 竢o版社 (2002年1月30日 発行)
『アサヒカメラ 2月号』 朝日新聞社 (1999年2月1日 発行)
『日本カメラ 9月号』 日本カメラ社 (1999年9月1日 発行)


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